3%高張食塩水の使い方

症候性の低Na血症に対しては従来3%高張食塩水が使用されているが、実際にはいまだに確固たる使用法は確立していない。

従来は持続静注法が主体であったが、低Na血症による脳浮腫の治療として用いるものであり、その点での有効性から、近年の欧米のガイドラインでは中等度以上の症候性低Na血症に対してはボーラス法が推奨されている。

このため、最近は米国でもボーラス法を用いる頻度が増えているという(Georgetown Univ.  Dr. Verbalis)。

3%高張食塩水の投与法の問題点については、Univ. of RochesterのSternsらによる以下の論文に明解に解説されている。

Rondon-Berrios H, Sterns RH.

Hypertonic Saline for Hyponatremia: Meeting Goals and Avoiding Harm.

Am J Kidney Dis. 2022 Jun;79(6):890-896.

 

ポイントとして

 

血清Naの補正目標:6のルール

・症候性の低Na血症では6時間で6mEq/Lの上昇を目指す

ただし、痙攣、昏睡など脳浮腫からヘルニアへの進展が疑われるときは1時間で4-6mEq/Lの上昇を目指す。

血清Naの4-6mEq/Lの上昇が脳浮腫の改善に有効である

・安全のためには1日で6mEq/Lの上昇を目指す。

(ODSのハイリスクの場合。通常は24時間で10mEq/l未満を目指す)

 

末梢投与か中心静脈ルートか

末梢投与で十分である。高張食塩水は、アミノ酸入り糖液に比べれば、静脈炎を起こしにくく、中心静脈ルートから入れる必要はない。

 

持続静注かボーラスか

持続静注とボーラス法を比較検討した論文はいろいろある。

 

Garrahyらの報告では、SIADによる症候性の低Na血症患者22例に対しボーラス投与(100ml を15分かけて3回まで、その後は持続静注 20ml/hr)した前向き研究を行い、持続静注(20ml/hr)した28例の後ろ向き研究と比較した。その結果、投与後6時間の時点で、ボーラス法のほうが有意に血清Naを上昇させ、GCSでみた意識障害の程度にも改善がみられた。

Garrahy et al. J Clin Endocrinol Metab. 2019 Sep 1;104(9):3595-3602.

 

唯一のRCTとして韓国のBaekらよるSALSA Trialがあり、比較的軽度の症候性低Na血症患者でボーラス法(72例:2ml/kg 6時間毎)と持続静注法(73例:0.5ml/kg/hr)を比較した。その結果、ボーラス法のほうが1時間の時点では血清Naを有意に上昇させたが、それ以降の時点では差はなかった。また、過剰補正でreloweringを要した割合はボーラス法のほうが多かった(ボーラス法 57.1%、持続静注法 41.4%)。

Baek et al. JAMA Intern Med. 2021 Jan 1;181(1):81-92.

 

以上より、ボーラス法のほうが短時間で血清Naを上昇させ、意識障害の改善にも有効なことから、特にEAH(Exercise associated hyponatremia)のように生命の危機に瀕しているときは、ボーラス法のほうが適していると考えられる。したがって、欧米のガイドラインでは中等症以上の症候性低Na血症ではボーラス法が推奨されている(表1)

 

投与量

持続静注

0.5~1ml/kg/hrあるいはAdrogue-Madiasの式から計算して投与することが多い。

しかし、Adrogue-Madias式の問題点は尿中への水・Na排泄を考慮していないことである。血清Naが上昇して脳浮腫が改善し嘔吐が軽快すれば水利尿が増大することはよくみられる。このためAdrogue-Madias式から計算すると、予想よりも血清Naが上昇することが多い。

また、尿量・尿中Na濃度を測定して計算しても、それは常に変化するものであり、変化についていけない場合が多い。

結局、補正速度の正確な予測は困難である。

そのため、まずは適当な速度(0.5-2ml/kg/hrなど)で開始し、血清Naを経時的(2時間~4時間毎)に測定して、適宜調節するしかない。

 

ボーラス法

米国では100ml(10分以上かけて)を3回まで、欧州では150ml(20分以上かけて)を2回までという投与法が多い。しかし、100mlを3回あるいは150mlを2回投与した場合は過剰補正になりやすい。

また、ボーラスで投与後は、過剰補正になっていないか、持続静注法以上に頻回の血清Na測定が必要な場合もある。

 

過剰補正を防ぐには:DDAVPの併用(表2)

血清Naの予想以上の上昇は、水利尿の想定外の増大による場合が多い。したがって、DDAVPを併用して水利尿をコントロールすることは、過剰補正の予防として合理的と考えられる。

ただし、DDAVPを併用すると、低Na血症の回復は緩やかとなり入院期間が長くなる可能性がある。

 

予防的:DDAVP 2-4μg IV/SC 6-8時間ごと

過剰補正になりそうなとき:DDAVP 2-4μg IV/SC 6-8時間ごと

過剰補正になってしまったとき:DDAVP 2-4μg IV/SC 6-8時間ごと+ 5%ブドウ糖液 3ml/kg/hr

 

表1.症候性低Na血症の欧米の治療ガイドライン(Am J Kidney Dis. 2022 Jun;79(6):890-896. )

 

表2.低Na血症の過剰補正のDDAVPによる予防法(Am J Kidney Dis. 2022 Jun;79(6):890-896. )